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赤羽美和さん

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第8回・赤羽美和さんに聞きたい

大手町のオフィス街は、普段ならまったく縁のない場所なのですが、今日は重大なミッションがあるのです。あの「サントリー ウーロン茶」や「ユナイテッドアローズ」などの広告を手掛ける、株式会社サン・アドのグラフィックデザイナー赤羽美和さん。『あかずきん』『しらゆきひめ』のおしゃれな絵を描いた張本人。出していただいたウーロン茶を飲みながら、お話をうかがいます。
あかずきん あかずきん
天沼春樹・文/赤羽みわ・絵
おはなし絵本クラブオリジナル
しらゆきひめ しらゆきひめ
天沼春樹・文/赤羽美和・絵
おはなし絵本クラブオリジナル


【きっかけは隣のデスク】
千木良:普段はどういうお仕事をされてるんですか?
赤羽:広告制作です。アートディレクターと呼ばれる人のもとで、ポスターや新聞、雑誌広告のレイアウトなど、デザイン作業をしています。たまに1人でこなす仕事だと、自分でイラストを描いたりすることがありまして。それを隣のデスクだった木村昇さん(ハイパー絵本のクリエイティブディレクター。コピーライター)がチラ見(笑)してて、「へ〜。描くの好きなんだ〜」って話になって、今回の絵本の仕事をいただいたんです。
千木良:なるほど! この『あかずきん』と『しらゆきひめ』ですが、絵はおしゃれで可愛いけれど、文章はグリム童話に忠実な描写なのか、ちょっと怖いですよね。それを岸田今日子さんがナレーションするから迫力があって……。絵と文のギャップが、不思議な効果を生んでる気がするのですが、どのように意図されて作ったんですか?
赤羽:まず天沼春樹さん(文章を担当。グリム童話の研究者)から文が送られてきて、よく知られてるお話だし、あまり子供子供したものじゃなくて、「大人も読める方がいいね」と木村昇さんとも話していたんです。かといって、ハイパー絵本は対象年齢が4才くらいと低いしなあ、なんて思って…。色と形をシンプルにして、絵だけ追ってもストーリーがわかるようにと考えた結果、こうなりました。というか自分はそういうのしか描けないし(笑)



千木良:このあかずきんちゃんは、顔の表情からしてもかなり「天然」というか、ピュアというか……。赤ちゃんみたいですよね。狼にお花を摘もうと誘われて森の奥へ、奥へと行ってしまうところ、たまりません(笑) 白雪姫もピュアですが、ちょっとキャラクター違いますね。
赤羽:『あかずきん』の方が、「狼と出会ってあっち行ってこっち行って」とすごろくのように自分から動いてる印象がありますね。『しらゆきひめ』はなすがまま、陥れられるまま。
どう描いていこうか考えて、初めは『しらゆきひめ』も、イラストのアウトラインを黒でとっていたのですが、“白雪”という言葉のイメージから離れていくような気がして、やめたんですよね。『あかずきん』は黒で輪郭を描いてるんですが。

千木良:(ハイパー絵本を見ながら)あ、本当だ!『しらゆきひめ』は輪郭の色が場面によって違うんですね。(また見て)この、終わり方が凄いですよね。おきさきさまが鉄のスリッパを履いて……うーん……(見入っている)。火が燃えてるシーンですが、背景が赤くて炎がモザイク模様のようなカラフルな色で、普通と違うんですね。
赤羽:はい。文章のどこをとって絵にしたら、通して読んだときにわかりやすいかなと考えたんです。そうしたら、背景の色を、場面の雰囲気とか、人物の心情で決めたほうがいいかなあ、って。
最初の雪が降ってるシーンはバックが水色で普通なんですが、お妃様が出てくるところは濃いブルー、小人のシーンはピンクっぽい色、ラストの幸せに向かってくところは黄色っぽく、とか。

千木良:へえ。面白い。デザイナーっぽい作り方なんでしょうかね?
赤羽:どうですかね?そうかもしれないですね。基本的に配色を考えるのが好きなので、木なども(幹の模様を)細かく分割して描いてるんです。そうやって、自分の楽しみを作ったという(笑)
大学はデザイン科だったのですが、「ダイヤグラム」という地図とか表をデザインする授業が好きでした。今にして思えば、ですけど。自分で考えた仕組みに従って点とか線を配置するんですけど、現れる図形は予想できない、偶然的なものになる、っていうのが自分の趣向に合っていたというか…。バス停の時刻表を作ったり……卒業制作では、ジャズの譜面を図にしてみました。



【幾何学的な思考で】
千木良:あ、ジャズがお好きなんですか?
赤羽:はい、でもあんまり詳しくないです。アート・ブレイキーの『モーニン』という曲があって、アドリブのソロの譜面が楽譜屋さんに売ってたんですね。それを見ながら、五線譜を円にして……(ホワイトボードに描いていただく)。音の高低がありますよね? 中心に行くに従って……あの、わかります?
千木良:なるほど……(難しいです)。
赤羽:楽器が幾つかあるので、色で分けて、それを重ねるとあら不思議!花火みたい!それを見ながら曲を聴くと、もうトランスするというか!……なんの役にも立ちませんが(笑)。
千木良:いえ、いえ、その感覚はきっとデザイナーに重要ですよ!幾何学的なものに惹かれるんですか?
赤羽:そうですね、色がわかりやすく、ぱきぱき分割されてるのが好きなんですよ。好きな絵本作家は、安野光雅さんとかトミー・ウンゲラー、ブルーノ・ムナリ、ディック・ブルーナとか……。小さいときは、絵本を絵で選り分ける子供でした。『11ぴきのねこ』を憑かれたように読んでいました。「馬場のぼる天才だよ!!」と思いながら。


赤羽さんの卒業制作作品



【「姫」より「鏡」】
千木良:そういう赤羽さんが、『しらゆきひめ』や『あかずきん』などの「お姫様もの」をやるっていうのが面白いですね。メルヘンすぎて好みに合わないんじゃないかと勝手に心配してしまいますが。
赤羽:そういえばお姫様よりも、魔法の鏡とかリンゴに興味があったかもしれないですね。「鏡の中に別人が映って喋るってどーゆーこと!?」って。
千木良:童話のサイエンス面に興味があったと。自分で気に入ってるシーンはありますか?
赤羽:『あかずきん』で言うと、あかずきんが森に入って後ろ姿でボー然としてるところと、おばあさんの部屋に入ってボー然としてるところが気に入ってます。
千木良:確かに、妙に深遠な気持ちにさせられる絵ですよね。背景が濃い青で。
赤羽:『しらゆきひめ』だとお妃様のシーンと、ラストの燃えているところ。うまくいったかな。なんて。
千木良:なるほど。それにしても可愛い絵ですよね。カレンダーやスケジュール帳などのグッズになると、いいかもしれません。
赤羽:デザインしますよ〜(笑)。
千木良:本日はどうもありがとうございました。
赤羽:こちらこそありがとうございました。

『あかずきん』『しらゆきひめ』のお姫様シリーズは三部作になる予定で、次はガラスの靴のあの人になるかもしれない、とのことです。どうぞお楽しみに!!


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赤羽美和
1977年生まれ。武蔵野美術大学卒。
現在、(株)サン・アド在籍。
グラフィックデザイナー。
 
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  千木良悠子 千木良悠子   1978年東京生まれ、慶応義塾大学卒。作家として小説「猫殺しマギー」(産業編集センター)を出版しているほか女優や映画監督としても活動。現在「おはなし絵本クラブ」にてウェブ絵本を製作中。
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